ここまで黄金の18世紀とも言われる、イギリス家具史の中で、
トーマス・チッペンデールとロバート・アダムをご紹介してきました。
黄金期と呼ばれるだけあって、まだまだ個人として優れたデザインを残した人がいます。
その中の一人、今回の主人公はジョージ・ヘップルホワイトです。
この人も本を出版しています。 Maker and Upholster’s Guide この本は1788年に出版され
クライアントとクラフツマン両方から愛用されます。またヘップルホワイトはトーマス・シーラーと
The Cabinet-maker’s London Book of Prices を刊行します。
この当時、家具作る人はスペシャリストとなっていました。
工房を運営するマスター、そこで働く従業員のジャーニーマン、そして徒弟制度の弟子、
3つの階級があって工房の経営が運営されていました。この工房の中では一つの家具を作るとき
木材や布張りなどのおもな材料費用は経営者が出していましたが、その他のこまごました物は
従業員であるじゃーニーマンが費用を持つことになっていました。そして雇用形態は日払いか、家具ごとの出来高でしたので
家具ごとのコストの計算をすることがとても大変でした。ですので、その基本的な労務費を算出して、
家具ごとのコストがわかるような出版物を製作したのがこの本です。この本を見れば、製作費、家具の値段、そして家具の種類(カタログとしての役割)と
たくさんの役割を果たしました。ですので、この本は主にワークショップで使われました。
ヘップルホワイト自身のデザイン的な特徴は、盾の形をした背もたれ、細く洗練された形で作られており、脚もまっすぐでテーパーとなっており、
純粋にロバートアダムのデザインを継承して、もっと単純な構成、形へと移行されていきました。
やはりスタイル的にはネオクラシカルのモチーフをふんだんに取り入れており、ハープ、スワッグ、盾、などの古代ローマ、古代ギリシャを
連想させる装飾を多く用いています。デザイン的にはシンメトリーの形になってきて、左右対称、長方形、半円の形などが多くなってきています。
このデザインはアメリカのフェデラルというスタイルに大きな影響を与え、大流行しました。のちに、アメリカの国旗などに描かれる
イーグルの模様も、この時代のデザインの影響が強く反映されています。