今日は技術的なおはなしです。
今日のブログでも書きましたが、
修復を勉強中の後輩が、(今日は初めて会ったのですが、後輩ということで。)
今現在の修復の方法についてたくさん話をしてくれました。
少し専門的になりますが、書いてみます。
とにかく、イギリスのアンティーク家具の修復は「オリジナルの部材を残す」
このルールを厳守する方向に向かってまっしぐらという印象を受けました。
HPにもかいてありますが、
コンザベーションとレストレーションという2つの修復方法の考え方があります。
(詳しくはHP http://hakoya.masamune-workshop.com/antique.html)
接着剤の選択や、ジョイントの修復方法については、特に大きな違いを見せているようでした。
2007年時点でもコンザベーションとレストレーションでは大きな違いがあり、
今回は同じ学校の修復方法でも、2007年からは方法に違いが見られました。
次回から今までに直した家具を見ながら、修復のポイントや歴史的なことや、その他少しづつ
ポイントを絞って書いてみようと思っています。突然内容が飛躍してしまい、わかりづらいこと
がありますが、今後記事を読んでいくうちに、今日の話に何度も立ち返ることになりますので、
なんか言ってたなと思ってもらえれば幸いです。
今回はとりあえず、熱が冷めないうちに今日の後輩の話の内容を書いておきます。
ちなみに、今回の写真は2007年度の修復法です。家具の部材と部材との接合部分(ジョイント)の修復です。
腐食が進行していて、虫にも食われており、指で押すとボロボロと崩れるように、オリジナルの部分が
なくなってしまいました。
上2枚の写真は、接合部分がなくなっていたので、新しく出っ張りのあるパーツを作って、
オリジナルの部分に掘りこんではめ込んでいます。
下2枚の写真は接合部分の側面がなくなっています。新しくパーツを作り、
オリジナルの部分も直線と直角に合わせてカットして、貼り合わせました。
上2枚の写真は膠を使いますが、下2枚の写真はエポキシ性接着剤をを使いました。
上2枚の部分は接合うぶんですので、将来的に外す必要があります。
膠は熱や溶剤で柔らかくなり、ふきとれますので、ジョイントには膠です。
下2枚は、もともと1本の角材からできており、外す必要のない一つのパーツですので
強力な接着剤でしっかり接着します。
これが2007年度の基本の修復方法です。
それが、今は、オリジナルの部分を削り取る範囲は0に近い範囲にするように努力しているようです。
2007年度の写真の範囲でカットしていたらダメのようです。もっと最小限でできるようにしないと・・・。
無理。と思ってしまします。
接着剤も将来的にはがすことができるように、木部に塗料や膠で膜を作ってから強力な接着剤を使うようです。
お薬がパラフィンの紙で包まれているので、薬同士が箱の中でくっつかないように、
オリジナルの部分には、はがすことが困難な接着剤を直接付けないようにするということです。
これでしたら、膜の部分は何かしらの方法ではがすことができますので、
膜と一緒に接着剤もはがせるということでした。
この努力。このアイディア。そしてそれを遂行する強い意志。
はっきり言って、この方法をやってるかどうかは、誰にもわかりませんので、
それでも、見えないところで、しっかり仕事をするということです。
ただ、少し僕には異論があります。おいおいこの記事の中で書いていきます。
コンザベーションの考え方が強くなってきていて、「見るオブジェクト」、「飾るオブジェクト」
としての家具を直す方法論が学校の修復方法としても主流になってきています。
これは、学校を卒業したした生徒さんの取りたい進路が、美術館、博物館を目指す人が多くなってきており、また、学校の修復方法について審査、意見をする人もその方面の人が多いのだと思います。もちろん町場のレストレーション工房では使用に耐えうる修復を行っていますので、すこし方法が異なります。
これが修復にまつわる基本的な考え方であります。
これがなければ、もっと楽ですが、修復とは言えなくなってしまいます。
その点については、家具を所有する方にも深い考え方が必要になってきます。
それでは、次回から少しづつ、実際の修復の過程を見ながら説明していきたいと思います。