アンティーク家具の修復をしていると、過去に施された修復のひどさに、文句を言いたくなります。
この下の写真では、ジョイント部分のオスがありません。
カットされたのか、どうかも今となっては分かりませんが、
なぜこのまま放置されていたのか疑問です。
このような場合、穴と穴にうまくおさまるジョイントの部材を作ってやり
接合しなおします。なるべく隙間ができないように
すこし削ってははめてみて、ゆっくりと正確に部材をつくっていきます。
これで、ジョイントがしっかりと機能します。
基本的に木材の中の金属は抜き取ります。
木材は伸び縮みしますので、その動きを金属が邪魔するからです。
木材と木材をビスで結合するようにも、ピタッと吸いつくような平面同士なら
少しの接着剤で、とんでもない強度の接合が期待できます。
ガラスの上を水でぬらして、プラスチック製の下敷きなどを置くと
取れなくなる経験をしたことがあると思います。
あの状態が最高の接合面です。
ですので、ビス穴があった部分には一度木栓をしておきます。
これで接着剤もしっかり吸いつきますし、新しくビスをうったり
ネジをいれるときにしっかり食いつくようになります。
ちょっとしたことですが、こういう積み重ねが全体の強度を上げていきます。
アームの部分は過去の修復で、短くカットされていました。
長さをもう一方のアームと合わせます。
前回は上からビスで固定されていたのですが、やっぱり金属は木材の割れを
誘発しますから、抜き取って、木材とアニマルグルーの圧着で固定します。
まずは長さがあうように木材を間に入れます。
大きなスクリューのあとには木栓とパッチでふさぎます。
ちなみにアンティーク家具で使うスクリューはすべてマイナスヘッドです。
頭の部分がマイナスに切られています。プラスのものは現代のものだけです。
ネジについて詳しく書かれています。
http://blog.goo.ne.jp/canvas_f20/e/e82bf307cdb8672de969808d7ab19275
これで両方のアームの長さがそろいました。
すごいのは、このアームの長さが違うことを、先生はすぐに見抜きました。
恐ろしく目のいい先生です。
いわれるまで、まったく気づきませんでしたが、
先生曰く、だいたい修復の跡をみると、何をやって、どう失敗しているか
推測がつくのだそうです。恐れ入ります。