マサムネ工房・REPAIR

修復の基本12 木工部分の修復2 

アンティーク家具の修復をしていると、過去に施された修復のひどさに、文句を言いたくなります。

この下の写真では、ジョイント部分のオスがありません。

カットされたのか、どうかも今となっては分かりませんが、

なぜこのまま放置されていたのか疑問です。

このような場合、穴と穴にうまくおさまるジョイントの部材を作ってやり

接合しなおします。なるべく隙間ができないように

すこし削ってははめてみて、ゆっくりと正確に部材をつくっていきます。

これで、ジョイントがしっかりと機能します。

 

基本的に木材の中の金属は抜き取ります。

木材は伸び縮みしますので、その動きを金属が邪魔するからです。

木材と木材をビスで結合するようにも、ピタッと吸いつくような平面同士なら

少しの接着剤で、とんでもない強度の接合が期待できます。

ガラスの上を水でぬらして、プラスチック製の下敷きなどを置くと

取れなくなる経験をしたことがあると思います。

あの状態が最高の接合面です。

ですので、ビス穴があった部分には一度木栓をしておきます。

これで接着剤もしっかり吸いつきますし、新しくビスをうったり

ネジをいれるときにしっかり食いつくようになります。

ちょっとしたことですが、こういう積み重ねが全体の強度を上げていきます。

アームの部分は過去の修復で、短くカットされていました。

長さをもう一方のアームと合わせます。

前回は上からビスで固定されていたのですが、やっぱり金属は木材の割れを

誘発しますから、抜き取って、木材とアニマルグルーの圧着で固定します。

まずは長さがあうように木材を間に入れます。

大きなスクリューのあとには木栓とパッチでふさぎます。

ちなみにアンティーク家具で使うスクリューはすべてマイナスヘッドです。

頭の部分がマイナスに切られています。プラスのものは現代のものだけです。

ネジについて詳しく書かれています。

http://blog.goo.ne.jp/canvas_f20/e/e82bf307cdb8672de969808d7ab19275

これで両方のアームの長さがそろいました。

すごいのは、このアームの長さが違うことを、先生はすぐに見抜きました。

恐ろしく目のいい先生です。

いわれるまで、まったく気づきませんでしたが、

先生曰く、だいたい修復の跡をみると、何をやって、どう失敗しているか

推測がつくのだそうです。恐れ入ります。